ゴールデンパスを歩むために不可欠な「カオス」というまなざし──。
実は25年前、『ディスカバリー──世界の実相への接近』(1996年発刊)という本の中で、著者はすでにカオスについて次のように書かれています。
「1つの現実が生み出される以前、そこには、すべての《光転》と《暗転》の条件が畳み込まれた『混沌』が横たわっています。そして、人間の思い、考え、創り出すというはたらきは、この混沌に形を与えます。そして、形を持つと同時に、それは人間に触れることによって、光転か暗転かの一方向の傾きを有し、そこから世界に向かって一方向の影響が流れ出すのです。混沌に人間の心のはたらきが関わることによって、そのカオスは、たちどころに光にも闇にもその姿を変えてしまうのです」(『ディスカバリー』P14)
そして、その2年後、『グランドチャレンジ』(1998年発刊)では、こんなエピソードが紹介されています。
「『荘子』の応帝王篇の中に、次のような話が出ています。
ある時、南海の帝と北海の帝が中央の帝である混沌の住む大地で出会った。混沌のもてなしに感激した二人の帝は、彼の厚意に報いようとして話し合った。『人間の体には七つの穴があって、これで見たり聞いたり食ったり息をしたりしている。混沌にはこれがない。ひとつ、穴を開けてあげたらどうだろうか』
そこで二人は、毎日一つずつ混沌の体に穴を開けていったが、七日目になって、混沌は死んでしまったということです。
穴を開けるという行為は人間の手が加わることの象徴です。人間が手を加えたとき、混沌は混沌ではなくなるということです」(『グランドチャレンジ』P104-105)
おもしろいですね。混沌さんの体に穴を開けたら(人間の手が触れる)、混沌さんは死んでしまい、混沌ではなくなってしまった──。まさに、今、著者が説いている「カオス論」──カオス(混沌)に人間の心(受発色)が触れると、それは光転か暗転いずれの現実に結晶化し、決して元のカオス(混沌)に戻ることはない──を象徴的に伝える話です。
『グランドチャレンジ』では、この話に続いて、カオスについて詳しく解説されていますので、機会があればぜひ目を通されることをオススメします。
私自身、『ゴールデンパス』の編集にあたってこの2冊を読み返す機会があり、「25年も前にカオスについてこんなに詳しく書かれていたのか」と改めて気づき、驚きました。発刊当時、何度も読んでいたはずなのですが、現在のような実感を伴った理解はできませんでした(今の理解も怪しいものですが……)。
その後、たとえば、『魂主義という生き方』(2014年発刊)、『未来は変えられる!』(2015年発刊)、『運命の逆転』(2016年発刊)、『あなたがそこで生きる理由』(2017年発刊)、『最高の人生のつくり方』(2018年発刊)、『自分を知る力』(2019年発刊)、『ゴールデンパス』(2021年発刊)といったように、次々とカオスについて新たな側面から解き明かされていることは、熱心な読者の皆さんならご存じのことと思います。
その中から、「超越の視点」という角度からカオスに触れている『魂主義という生き方』の一節をご紹介しましょう(下図もご覧ください)。
「ものごとをカオスとして受けとめる視点は、快苦、利害、光闇に分かれる同じ平面上にはありません。そこから上方に立ち上がったところにある、次元の異なる超越の視点なのです。
同じ平面上で快苦に揺れ動いている間は、その動揺を克服することは非常に困難です。同じ平面で生きている以上、そこに波が生じれば動揺せざるを得ないからです。
しかし、どうしても果たしたい願いを抱き、人生に使命を見出すとき──つまり私たちが魂の次元を取り戻すとき、快苦の平面から垂直に立ち上がる軸を持つことができます。そのとき、カオスの視点から、まったく異なる生き方を引き出すことができるのです。
快苦、優劣、価値のあるなしだけにとらわれるのではなく、その奥にある隠れた意味が見えてきます。
『苦』であっても、新たな挑戦を促しているのかもしれない。千載一遇のチャンスかもしれない。『快』であっても、大きな不足を呼びかけられているのかもしれない。次の次元に向かうために自分が変わるときかもしれない。だから、どんなときも、好調でも不調でも、順境でも逆境でも、願いを忘れず使命を尋ねて、最善を尽くす。それこそ、カオスという超越の視点を持った人の生き方です」(『魂主義という生き方』P108-110)
いかがでしょうか。カオスというものの見方を身につければ、快苦の平面上を行ったり来たりしてあえいでいた私たちが、ふと、空高く上昇できることに気づき、これまでとはまったく違った高いところから(超越の視点)、人間と世界を眺めることができる──素晴らしいことだと思いませんか?
それが、ゴールデンパスの出発地に立つことを可能にしてくれるのです。
高橋佳子著『魂主義という生き方』P109より
(編集部N)
『ゴールデンパス──絶体絶命の中に開かれる奇跡の道』(高橋佳子・著)
四六判並製 定価 1,980円(税込)