今日9月27日は、幕末の志士、高杉晋作(1839~67)の誕生日です。
高橋佳子先生は、著書『12の菩提心』の中で、風の心の菩提心を生きたモデルとして、この高杉晋作を紹介されています。
「風の心」を生きた人とはどのような人でしょう。
例えば幕末の長州藩士、高杉晋作がそうではないでしょうか。当時、長州藩は、外からは英米仏蘭の連合艦隊の一斉砲火を浴び、内にあっては幕府と薩摩藩から京都を追われ、さらに幕府からの長州征伐に遭うなど、まさに四面楚歌の状態でした。晋作は、何としても長州の人々を守りたいという願いのもと、奇抜な発想で戦果を上げてゆきました。四国連合艦隊との交渉の際も、巧みに賠償責任を幕府に負わせることに成功し、長州領内の一部租借の要求に対しても突然『日本書紀』を大声で吟じて相手を煙にまいてしまい、結局、イギリス総督も要求を諦め、晋作に好感すら抱いたと言います。また、晋作が考案した、身分に関わりなく誰でも参加できる新しい軍隊である奇兵隊には、農民、商人、僧侶、漁師などあらゆる階層の人々が集まりました。晋作は自らが説いた「狂の境地」を駆け抜けました。それは、どうしようもない状態にあっては、我を忘れて無我夢中ではたらくしかない、という意味です。まさに、その晋作の心が周囲に風を起こしていったと言えるのではないでしょうか。後に、伊藤博文は、碑文にそのような晋作のことを「動けば雷電の如く、発すれば風雨の如し。衆目駭然、あえて正視するなし」と詠んで讃えています。
(高橋佳子著『12の菩提心』p148~より)
いかがでしょうか。目が覚めるような鮮烈な「風」を周囲に巻き起こし、人間関係を変え、現実を変え、新たな道を切り開こうとする姿が彷彿とします。
激動の幕末を新たな時代に向かって駆け抜けた高杉も、大政奉還のわずか半年前、肺結核でこの世を去ります。享年27歳。まだ若き青年の1人でした。
高杉はこんな句を詠んでいます。「面白きこともなき世を面白く」
これは上の句のみで、後に別人が付けた下の句もあって、その解釈は様々ですが、高杉は、現状を変えて理想の未来に向かう――すなわち、出発地から目的地に向かうゴールデンパスの歩みを夢見ていたのではないかと感じます。
それにしても、「狂の境地」で未来に向かおうとする高杉のエネルギーは、すさまじいものがあります。今、起こりえないことが現実となってしまう「まさかの時代」を生きる私たちに、もっとも必要とされている生き方のモデルの1つかもしれません。
(編集部N)
『ゴールデンパス──絶体絶命の中に開かれる奇跡の道』(高橋佳子・著)
四六判並製 定価 1,980円(税込)