スウェーデンの10代の環境活動家グレタ・トゥーンベリをご存知ですか?
2017年、15歳で「気候のための学校ストライキ」を起こし、スウェーデン議会の外で抗議活動を展開、さらに2018年、国連の気候変動会議で、190カ国の首脳を前に「経済成長しか考えないあなた方大人は、地球環境を犠牲にし、子どもたちの未来を奪っている」と痛烈な演説を行って、世界的に知られるようになりました。
グレタは、いわゆるZ世代(1990年代後半以降に生まれた人たち)の代表的人物の1人。彼女の活動で、世界中の多くの若者が環境問題に関心を持つようになったと言われています。
また、日本では、『人新世の「資本論」』(斎藤幸平著)という本が、25万部を超えるベストセラーで話題となっています。
これは、気候変動による深刻な環境破壊の根本原因は、世界を席巻している資本主義そのものであり、資本主義から脱却し、それに代わる新たな社会経済システムへの移行を提言している本です(著者は34歳の気鋭の研究者。グレタの訴えが、この本の執筆動機の1つになったと言います)。
400ページ近い厚い本で、しかも最晩年のマルクスの「研究ノート」などの新資料を掘り起こすという「カタい」内容でありながら、これほど話題になっているのは、それだけ多くの人々が今の社会や経済のあり方に疑問を感じ、新たな世界のあり方、ヴィジョンを求めているからでしょう。
この本では、無限に経済成長を図ろうとする資本主義の弊害を指摘し、それとは異なる豊かな世界像として、「脱成長コミュニズム」を提唱しています。確かにそれは、新たな未来社会のあり方を思い描くために、1つの手がかりとなる有益なモデルであるに違いありません。
しかし、「魂の学」のまなざしから見ると、精神世界と現実世界は切って切れない表裏一体のもの。世界を本当に変えようとするならば、現実に取り組むと同時に、それを生み出している精神(心)に着目し、その変革を起こさなければなりません。
環境破壊を顧みず、際限なく経済成長と利益を求めるのが資本主義であるならば、そのシステムを生み出している根本原因は、人間の快・暴流の心──。その闇を見取り、転換することなしには、本当の意味で未来社会を構想し、切り開くことはできないでしょう。社会をつくっているのは、私たち1人ひとりの心だからです。
ここでも、やはり、ゴールデンパスを歩むステップ──すなわち唯物的なものの見方から離れ、「魂の学」の人間観・世界観を心に置いたうえで、①目の前の現実をカオスと捉え(出発地)、②目的地・青写真を明らかにし、③出発地から目的地へと運ぶ力(1人ひとりの心の浄化によってつくられる力)を生み出す──がどうしても必要になるのではないでしょうか。
地球の環境破壊やコロナ禍のような「世界問題」にも、ゴールデンパスの開き方をマスターすることが有効であることは間違いありません。
(編集部N)
『ゴールデンパス──絶体絶命の中に開かれる奇跡の道』(高橋佳子・著)
四六判並製 定価 1,980円(税込)