名知仁子さんが働くミャンマーの農村は貧しく、医療施設もなく、電気、水道、通信などのインフラ設備も不十分な厳しい環境にある。そんな過酷な条件の下で人々の命と健康を守る医療活動は、並外れた情熱と行動力、リーダーシップがなければできることではない。
実際、それらの資質を豊かに備えた名知さんは、これまで巨大サイクロンの深刻な被害、安定しない政治情勢、さらには自らががんを患い、手術後も体力が回復しないなど、八方ふさがりの中で格闘しながら、道を開いてきた。その業績に対して、数々の賞も贈られている。
しかし、そんな名知さんが、どんなに頑張っても越えられない壁があった。
それは、代表を務めるNPO法人のボランティアが定着しないこと。もう1つは、同僚スタッフとの協同の問題だった。なぜうまくいかないのか。名知さんも、その真の原因をなかなかつかむことができなかった。
あるとき、名知さんは、知人に誘われ、「魂の学」の講演会に参加する。
そして、「魂の学」の実践者の歩みに触れた名知さんの心に衝撃が走った。
「自分が必死で頑張っても、現状を維持するだけで精いっぱいなのに、あれほど状況を転換してしまうなんて。魂の力を引き出せば、ここまで現実を変えることができるのか──」
そこから、名知さんの新たな歩みが始まる。
何よりも大きかったのが、「カオス発想術」だった。目の前の事態に潜む光と闇を見抜き、そこから光を引き出す「カオス発想術」──。それは、名知さんに想像もしなかった新たな力を与えてくれた。関わる1人ひとりの可能性と願いを引き出し、皆が心を一つにして共通のヴィジョンに向かってゆく協同体制が築かれていったのだ。
そればかりでない。「カオス発想術」は、名知さん自身の深い願いとヴィジョンをも引き出し、それを現実のものにする道を開いてくれた。今、名知さんは、その光り輝く道──ゴールデンパスをミャンマーの地で歩み始めている。
(編集部N)
『ゴールデンパス──絶体絶命の中に開かれる奇跡の道』(高橋佳子・著)
四六判並製 定価 1,980円(税込)