ゴールデンパスとは、どのようなものなのか。
その輪郭を示す様々な事例が、『ゴールデンパス』第1章に紹介されています(P50~)。
その1つに、未来の記憶がなせるゴールデンパスとしか言いようのない奇跡の道すじとして、明治維新が挙げられています。
歴史上、稀に見る無血革命として成就した明治維新──。
その運動を推進したのは、青年たちでした。
彼らの中には、若くしてこの世を去った人も少なくありませんでした(たとえば、吉田松陰30歳、高杉晋作29歳、坂本龍馬31歳)。短い人生を駆け抜けるように生き、未来の日本を切り開こうとした熱き姿。多くの人が、そこに「青年」の理想像・モデルを感じるに違いありません。
しかし、歴史を振り返れば、それは決して当たり前のことではなく、むしろ、時代の常識や価値観に呑まれ、翻弄されてしまった青年たちが少なくなかった──。高橋佳子著『レボリューション』には、こんな事例が紹介されています。
「古代ローマ時代、青年たちは、アジテーター(扇動者)の側にも体制維持派の側にも与する定見なき存在でした。
『若者たちは、自分の財産も他人の財産をも、費消するのを良いこととみなし、自分自身の欲望は全く抑えず、他の人たちの求めるものを拒むのを良しとする。その上そういった行動を男らしいこと、高邁な精神の現われとみなし、中庸と自制を臆病とみなす……』(サルスティウス)
これは、共和制末期の若者を文章の一節ですが、自分の欲望のままに揺れ動く青年像を彷彿とさせます。やがて青年たちは、国家体制の中に封じ込められてゆきました」(『レボリューション』第一章より)
次は、ナチスドイツの時代の青年たちです。
「19世紀のドイツでは、機械文明や資本主義社会などの『腐った享楽』から逃れようと、仲間同士が連れ立って自由に山野を逍遙するワンダーフォーゲル運動が青年運動として大流行しました。しかし第一次世界大戦敗戦を経て、ヴェルサイユ条約への反発などから次第にドイツの青年運動は国粋主義的傾斜を強め、やがてヒトラーが登場すると、ナチスを支持するヒトラー・ユーゲントへと統合されてゆきます。時代に対する問題意識を抱きながらも、最終的には時代の大きな流れに取り込まれ、迎合する生き方になっていったのでした」(同書)
そして、インドでガンジーと共に生きた青年たちです。
「200年近くもの長きにわたってイギリスの植民地支配に甘んじていたインドに彗星の如く現われたガンジーに、民衆は熱狂しました。そしていち早くガンジーの思想に共感し、歩みを共にしたのは青年たちでした。しかし、民族運動の高まる中で、あくまでも真理に基づいた具現──サティア・グラハを追求し続けるガンジーに青年たちは背を向け、やがて運動から離れてゆくことになります。最後までガンジー主義を貫いた青年もいたのですが、時代を超越したガンジーの生き方を、当時本当に理解できた若者は多くありませんでした」(同書)
では、なぜ、明治維新のときの青年たちは、時代を超えたまなざしを抱いて、新たな日本という国の扉を開くことができたのでしょうか。
『レボリューション』にはこのように記されています。
「維新の志士たちは、初めから維新をめざしていたわけではありません。……彼らは自らの意志を持ってというより、意識することなく何か大きな力に導かれ、時代の呼びかけに促されて維新の体現者になっていったということでしょう。
ただどの胸にも、如何ともし難い危機感が満ちていたのです。そしてわがことよりも藩のこと、藩のことよりも国のことを思う心──志が息づいていました。そしてその一人ひとりの志が互いに結び合い、見えない時代衝動に応える『志の連帯』をつくり上げていったのです。
維新を起こした人々は一見、それぞれまったく異なった考え方を持っていたかのように見えます。けれども、その結果を見るならば、そのような異なった思想の奥に、すべての経験を超えさせて、力を一つに結集させるだけの共通の『志』が生まれていたのです。彼らの魂を動かしていたのは、『新しい日本』『新しい時代』を求める、見えない衝動に他なりませんでした」(同書)
いかがでしょうか。あの時代を夢中で駆け抜けた青年たちは、自分の考えや立場を超えて、気づかぬうちに「宇宙との響働」へと導かれていたのではないでしょうか。彼らは、日本という国家全体のゴールデンパスを開く大事業に参画していたのではないかと思うのです。
そして、今──。コロナ禍、気候変動、格差の問題など、世界全体に激震が走り、100年に1度の歴史の転換期を迎える中、同じように、この世界にゴールデンパスを開く若き青年たちの力が待ち望まれているように思えてなりません。
その大いなる挑戦に向かっているのが、GLAの青年塾です。来る5月4日~5日、志を持った若者たちが集まる「2021青年塾セミナー」が開催されます。
関心のある方は、コチラをご覧いただくか、GLA総合本部(電話03-3843-7001)までお問い合わせください。
(編集部N)
『ゴールデンパス──絶体絶命の中に開かれる奇跡の道』(高橋佳子・著)
四六判並製 定価 1,980円(税込)