八木和男さん(株式会社八木繊維代表取締役)
本書の第4章「心に人を住まわせる」では、写真家の緒方啓助さんが、巨大広告キャンペーンで「相手の立場に立つ」という実践をした例が紹介されています。この話を読んだとき、かつての自分を思い起こしました。
私は、企業・自治体・各種団体のユニフォームを製作・販売する会社を経営しています。以前は、本当に自分中心の経営でした。お客様の要望を聞くことなく、自分の考えを一方的に伝えるという営業スタイルで、一時的に売上が上がっても、業績は不安定でした。
しかし、本書の著者の高橋先生が提唱する「魂の学」を学び始めた私は、次第に「お客様のニーズは何だろう」と考えるようになったのです。
お客様からの様々な要望をお聞きし、相手の立場に立って考える中で、それまで抱いていた「ユニフォームは汚れを防ぐために着るもの」という先入観が大きく変わり、「社員の方が快適に、プライドを持って仕事ができる」「着ている方や企業の好印象、イメージアップにつながる」など、ユニフォームには様々な可能性があることが見えてきました。そのように捉え方が変わると、不思議なことに地元の優良企業をはじめ、お客様が増え、会社の経営が安定してゆきました。
また、第4章の「他者不信」「他者軽視」の話では、私の中にも「他者軽視」があることを感じました。そして、「あなたが他者軽視の問題を抱えているなら、何よりも『相手に耳を傾ける』ことから始めてみましょう」(140ページ)という一文を読み、早速、「相手に耳を傾ける」実践をしてみました。
会社で、普段はあまり気に留めていなかった社員に声をかけ、相手の話に耳を傾けて聞いてみると、その人自身のよさやアイデアが見えてきて、私が抱いていたその方に対する思い込みが溶けて、違う関わりが生まれたのです。
「本書の内容を日々生かし、心に人を住まわせることができたら、必ず道が開ける!」。
これが率直な私の実感です。この本は、お客様や取引先、従業員など、多くの人と関わる経営者には必ず読んでいただきたい1冊です。仲間の経営者と一緒に読み深め、語り合ってゆきたいと思っています。