世界で猛威を振るっている新型コロナウイルスは直径わずか0.1マイクロメートル、花粉の数百分の一という非常に小さな存在です。
1個のウイルスの表面には、約100本のスパイクタンパク質が突き出ていて、その突起が人間の細胞の表面にあるACE2というタンパク質と結合すると、感染が起こります。
コロナのスパイクタンパク質と、人間のACE2というタンパク質は、鍵と鍵穴のようにピタリとはまるようにできていて、その結合部分を通って、コロナウイルスは人間の細胞の中に入ってゆきます。その時間はわずか10分だそうです。
しかも、その際、人間の細胞表面にあるタンパク質分解酵素がウイルスのスパイクタンパク質を切断し、ウイルスが細胞に入り込むのを助けているというのです。
そして、細胞内に侵入したコロナウイルスは、Ⅰ型インターフェロン(ウイルスの増殖を抑えるタンパク質)がはたらかないようにして、人体のウイルスへの抵抗力を弱めるそうです。さらに、Ⅰ型インターフェロンが十分にはたらかないと、ウイルスを排除できなくなるばかりでなく、感染者に風邪症状が起こりにくくなると言われています。
つまり、新型コロナウイルスは、自分を排除しようとするⅠ型インターフェロンのはたらきを弱めるばかりでなく、無症状の感染者を増やし、さらに感染を拡大しようとしているかのようです。
非常に巧妙な手口で生き延びようとするウイルスの意志を感じるとともに、人間があずかり知らぬミクロの世界の精妙なはたらきに驚きを感じずにはいられません。
(上記のような感染のしくみから)ある生物学者は、「ウイルスは、もともと生物の体内にあった遺伝子の一部が飛び出したもので、ウイルスと人間は共生関係にあり、ウイルスが人間の身体に一方的に攻め込んでくるというより、人間の側がウイルスを迎え入れるような挙動をしている」と指摘しています。
人類と感染症の闘いの歴史の中で、唯一撲滅したのは天然痘だけで、その他、多くの細菌やウイルスは、今もこの地球上で人類と共存しています。
新型コロナウイルスを完全に消滅させるのが困難であるならば、相手をよく知り、コンロトールし、共存してゆく「ウィズ・コロナ」の中に、私たちが歩むべきゴールデンパスがあるのかもしれません。
これからも、ゴールデンパスを開くための最強のメソッドであるウイズダムに取り組み、それぞれの生きる現場における未来の青写真(ヴィジョン)を思い描いてゆきたいですね。
(編集部N)
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