未来の記憶──。不思議な言葉です。
未来のことなんて誰もわからないのに、それを記憶し、思い出すなんてあり得ない。
そんな、常識では考えられない「未来の記憶」の話から『ゴールデンパス』第1章は始まります。
そこに現れるのは、映画『メッセージ』の後半のシーン。世界各地に飛来した謎の異星人、ヘプタポッドと人類が破滅的な戦争に突入しようとするその直前、主人公が「未来の記憶」を使って、その絶体絶命の危機を奇跡的に回避してしまう……。
著者は、この映画の一場面が「ゴールデンパス」を象徴的に伝えてくれる物語でもあるとして、こう語ります。
「ゴールデンパスとは、まさに、未来の記憶によって開かれるような奇跡の道なのです」(P32)
ゴールデンパスと未来の記憶とは、切っても切れない関係にあるのですね。
私たちも、本書を熟読してゴールデンパスを歩もうとする中で、未来の記憶を持つことができるようになる──何だかワクワクしてきませんか。
第1章で紹介されている2人の経営者(北川盛朗さん、海老名忠さん)も、「未来の記憶」の力を得て道を開いてゆきました。
経営が立ちゆかなくなり、会社を閉じる決断をした北川さんは、実はそのとき、あり得ないような会社の再生を「知っていた」。
会社を支える販売代理店の突然の身売りに、いったん書いた「罵倒の手紙」を「感謝の手紙」に書き換えた海老名さんも、その後に訪れる奇跡の未来を「知っていた」。
もちろん、お2人がそのとき、未来の記憶を明確に意識していたわけではないでしょう。
表面意識よりもっと奥の魂の次元の自分が知っていたということではないでしょうか。
『ゴールデンパス』には、このように書かれています。
「過去・現在・未来を結びつけ、『未来の記憶』にアクセスできるのも、魂の力の可能性です。私たちの心境が深まり、周波数が整って宇宙・自然の法則に合致するようになると、魂の次元を通じた宇宙との響働の準備が整えられるのです。先に紹介した北川さんや海老名さんの現実は、まさにそのことを物語っています。お2人の歩みには、それぞれの心境の深まりがはっきりと見て取れます」(P47)
宇宙・自然の法則と共鳴できるように、心を浄化し、深めてゆくことがやはり何よりも大切なのですね。
未来の記憶によってゴールデンパスを開いた人は、もちろんこのお2人だけではありません。
先日、高橋佳子著『未来は変えられる!』を読み直す機会があったのですが、その最終章に紹介されている許斐博史さん(重症心身障害児施設長、医師)もそのお1人ではないかと思いました。
許斐さんは、現在、全国から訪れる多くの障害を持つ子どもやその親御さんの診察・治療とともに、その方々の人生に深く寄り添い、同伴されています。
しかし、若い頃は、国立精神・神経センターの有能な研究者でした。
ハーヴァード医科大学をはじめ海外での輝かしい研究実績を携え、誰もが羨むようなエリートコースを歩み、将来を嘱望されていた許斐さんですが、ある日、突然その地位を捨てて、近隣の病院に転出してしまいます。
「臨床医として患者さんに応えたい」と強い願いを抱いての転身。
上司、同僚、友人たちは「もったいない」と言って引き留めましたが、許斐さんの決意は変わりませんでした。
その当時の許斐さんは、現在という未来をはっきりと思い描いていたわけではないかもしれません。先行きどうなるかわからない不安もあったに違いありません。実際、その後の道のりは、茨に次ぐ茨の道としか言いようのないほど、困難に満ちたものとなりました。
その1つ1つに向き合い、乗り越えてゆく中で、患者さんに深い癒やしをもたらし、その魂の成長を見守る臨床医となっていった許斐さん──。
あのとき、なぜ輝かしいキャリアを捨てて、一臨床医として再出発することになったのか。
『未来は変えられる!』で、著者はこのように記しています。
「私は、そこにこそ人間の魂の力が現れていると思うのです。その選択の確信をもたらしたもの──。その見事さ、清々しさは、あたかも、当時の若かりし許斐さんがタイムマシンに乗って、24年後の自ら自身の活躍を見ていたような感慨さえ抱かせます」「あのときのあの確信は、時空を超えた、24年後の未来のデジャヴ(既視感)によってもたらされたということなのです」
この「未来のデジャヴ」は、「未来の記憶」でもあるのではないでしょうか。
許斐さんの歩みにも、まさに「未来の記憶」によって導かれたゴールデンパスが現れていることを感じます(機会があれば、ぜひ『未来は変えられる!』4章をお読みください)。
周囲を見渡せば、皆さんがご存じの方の中にも、「未来の記憶」によってゴールデンパスを開いたと思われる方がいらっしゃるかもしれません。
「魂の学」の言葉を手がかりに1人ひとりの(自らの)歩みを丹念に見つめ直してゆくと、人生は新たな相貌を私たちに見せてくれる──。とても奥が深く、かつ、とても面白い取り組みではないでしょうか。
(編集部N)
『ゴールデンパス──絶体絶命の中に開かれる奇跡の道』(高橋佳子・著)
四六判並製 定価 1,980円(税込)