ある日、突然、倒産の危機に瀕した会社の社長を引き継がなければならなくなったとしたら……あなたはどのように思われるでしょうか?
実際、その試練に直面したのが、『ゴールデンパス』第4章に登場する八木陽一郎さんです。
その日が来るまで、八木さんは、香川大学大学院地域マネジメント研究科教授であり、組織行動学や組織開発を専門とする経営学者でした。
しかし、実家の会社が経営難に陥ったことから、八木さんは大学教授を辞し、社長を引き継ぐことになったのです。
実際に社長に就任してみると、会社は、八木さんの想像をはるかに超えた壊滅的な経営状態でした。
八木さんはいわば経営学のプロです。そんな状態でも、「私は大学でも組織論を教えてきた。その専門知識と理論を生かせば、必ずうまくいく」と確信し、著名なコンサルタントにも手伝ってもらいながら、会社の問題点を洗い出し、その改善に取り組んでゆきます。
ところが、事態はまったく好転せず、コンサルタントとの契約も解除。会社はいよいよ危機的な状況になり、八木さんは、「倒産したらどうしよう……」という不安と恐怖に苛まれます。次第に心身ともに追い詰められ、ついにアナフィラキーショックを起こして救急搬送されてしまいました。
その後、さらに社員の1人が突然亡くなり、労働基準監督署の調査が入って、「過労死の疑いがある。書類送検はまぬがれない」とまで言われてしまいます。
さすがの八木さんも、「ああ、会社は倒産する。これで倒産しなかったら奇跡だ」。まさに万事休す──。
そのとき、八木さんが出会ったのが「魂の学」──とりわけ「内外合一のサイクル」を回す実践論でした。
「内外合一とは、私たちの内側(心)と外側(現実)は、コインの裏表のように分かちがたく結びついていて、別々に捉えることはできないということです。そのつながりは、私たちが普通に考える以上に、密接、強固で相互に多大な影響を与えているのです」(『ゴールデンパス』P201)
「魂の学」のセミナーでその理論と実践に触れた八木さんは、驚きとともに「これだ!」と確信します。
八木さんが、大学で教えるほどにまで究めた経営学は、いわば「すべてを数値化して捉える経営」であり、外(現実)には徹底して取り組んでも、内(心)に目を向けることはありません。多くの企業に浸透しているPDCAサイクルも同じです。
しかし、内外合一のサイクルは、内と外を1つと捉え、ダイナミックにエネルギーを循環させるもの──。
このとき、八木さんの中で、言うならば「PDCAサイクル」から「内外合一サイクル」への大転換が起こったのです。
セミナーから帰った八木さんは、会社の役員会で、「これからは『魂の学』を基とした経営をしたい」と宣言し、心と現実を1つにつなぐ、これまでとは全く異なる実践を重ねてゆくことになります。
その八木さんが具体的にどう会社を変えていったかは、『ゴールデンパス』第4章に詳しく紹介されていますが、その歩みを一言で表すなら、まさに本書のサブタイトルそのもの──「絶体絶命の中に開かれる奇跡の道」としか言いようがありません。
もし、MBA(経営学修士)の知識やPDCAサイクルでうまくいかないと感じている経営者やビジネスパーソンの方がいらしたら、ぜひ、本書をお読みください。きっと想像もしなかった世界が見えてくるに違いありません。
(編集部N)
『ゴールデンパス──絶体絶命の中に開かれる奇跡の道』(高橋佳子・著)
四六判並製 定価 1,980円(税込)