釈迦の苦悩と出家、悟りへの心の遍歴、そして悟り(宇宙即我)。著者は、何の資料、参考書もなく、筆のすすむままに釈迦を書いたが、人間・釈迦を語ってこれ以上の本は未だかつてない。読者は、人間としての釈迦の心にふれるとともに、法(神理)の世界へと導かれてゆく。真実なるものは、理に適い、歴史的にも証明され、現実に現われとしてもとらえ得るものでなければならない。 本書は、その観点から、心の存在と、人の生きるべき道を誰にもわかり易く書き著したものである。
内容の一節
智慧ある者は、知識の限界をよく知っている。愚かな者ほど、知識に酔い、自分を高く見せようとする。 バラモンの修行者の中には、ヴェーダやウパニシャードの聖典に通じ、知識は豊かであるが、実践がないので、 知識の枠から一歩も外に出ることができず、聖典をもて遊ぶ者が多い。哀れというほかはない。
真の智慧は、心の中から湧き出ずるパニャー・パラミタ(内在された偉大なる智慧)の境地から生まれてくる。 それは、人からの借り物のような知識からは、決して生じてはこない。 法の実践によって得た安らぎ、感謝、調和の心から湧きでるものである。(第三巻 本文191頁)