釈迦の苦悩と出家、悟りへの心の遍歴、そして悟り(宇宙即我)。著者は、何の資料、参考書もなく、筆のすすむままに釈迦を書いたが、人間・釈迦を語ってこれ以上の本は未だかつてない。読者は、人間としての釈迦の心にふれるとともに、法(神理)の世界へと導かれてゆく。真実なるものは、理に適い、歴史的にも証明され、現実に現われとしてもとらえ得るものでなければならない。 本書は、その観点から、心の存在と、人の生きるべき道を誰にもわかり易く書き著したものである。
内容の一節
因縁因果は、カルマの輪廻であり、苦楽は永遠につづく。大部分の生命は、循環の法の作用のなかで、因縁因果をくりかえしているわけである。
シュット・ダナーがブッタの法を聴聞し、感動した点は、転生の絆から完全離脱できるということであった。 王といえども人の子であり、悩みがつきなかった。戦争の恐怖は彼の心を四六時中しばりつけていた。生きているかぎり、死はまぬがれないし、死の恐怖もまた彼の心をとらえて離さなかった。しかし、ブッタの法に接し、正法は死からの離脱であり、永遠の生命の獲得であることを知った。人として、これほどの喜びがまたとあろうか。(第四巻 本文142頁)