日本の精神的な支柱の一つである仏教の流れを切り開いた十人の先人を取り上げ、それぞれの時代にあった混乱や危機を彼らがいかに引き受け、道を切り開いていったか、その魂と人生の軌跡に迫る。最澄、空海、法然、親鸞、蓮如、道元、明恵、道宗、鉄眼、良寛──。混迷の時代に生きる私たちに、時を超えて、今届けられる先人たちのメッセージとは何か──。
そこには、私たち一人ひとりが直面する難題を解決し、新しい人生、来たるべき時代を創造する智慧が散りばめられている。彼らもまさに混迷極まる時代の中で、本来の自分を知り、試練の呼びかけを受けとめ、自らを変えることによって世界をも変えていった人々であった。そうした先人たちの生き様は、著者が『グランドチャレンジ』において提唱した、「内を見つめ、内と外をつなぐ」21世紀原則を生きるものであり、その意味で本書は『グランドチャレンジ』の格好の入門書ともいえる。
何より、本書を通して、先達が歩んだ人生の風景とその一人ひとりの魂の鼓動が直接胸に響き、先達たちの気配にふれることができるだろう。
内容の一節
限りを尽くして人生を燃焼することができる澄みきった心──「明智」の「源流」を探す旅とは、今混沌と化す世情の中から曇りを払って時代を生き通す道を探すことに等しいものです。
執筆の過程を通じて私は、一人ひとりの先達の大きさに改めて圧倒されました。こうした偉大な先達を私たちが祖先として先輩として抱いていることに、深い感銘と畏敬の念を禁じ得ませんでした。そして、私たちの誰もがその魂の系譜を引き継いでいることに誇りと責任を感じます。
時代が求めている変革──。本書が一人ひとりの中に起こる「内を見つめ」「内と外をつなぐ」生き方への転換に、わずかでも寄与することができるならば、それは望外の喜びです。読者の中から、先達の人生を賭けたメッセージを一人でも多く受けとめる方が現われることを心より願って──。(「プロローグ」19頁)