釈迦の苦悩と出家、悟りへの心の遍歴、そして悟り(宇宙即我)。著者は、何の資料、参考書もなく、筆のすすむままに釈迦を書いたが、人間・釈迦を語ってこれ以上の本は未だかつてない。読者は、人間としての釈迦の心にふれるとともに、法(神理)の世界へと導かれてゆく。真実なるものは、理に適い、歴史的にも証明され、現実に現われとしてもとらえ得るものでなければならない。 本書は、その観点から、心の存在と、人の生きるべき道を誰にもわかり易く書き著したものである。
内容の一節
バンダバ山はブッタの帰依者でにぎわいでいた。 ブッタは、いちばん高い所に座した。 しばらくして説法が始まった。ブッタの、太く、ゆったりとした、そして重厚なその語調は周囲の空気をふるわし、森や林に伝わっていった。
「諸々のサロモン達よ―。そなた達の眼は燃えている。燃えている眼で物を正しく見ようとしても見ることは出来ない。欲望に心が移り、 足ることを忘れた心があるかぎり、正しきものの判断は出来ないし、安らぎの境地も得られない。‥‥」(第二巻 本文100頁)