釈迦の苦悩と出家、悟りへの心の遍歴、そして悟り(宇宙即我)。著者は、何の資料、参考書もなく、筆のすすむままに釈迦を書いたが、人間・釈迦を語ってこれ以上の本は未だかつてない。読者は、人間としての釈迦の心にふれるとともに、法(神理)の世界へと導かれてゆく。真実なるものは、理に適い、歴史的にも証明され、現実に現われとしてもとらえ得るものでなければならない。 本書は、その観点から、心の存在と、人の生きるべき道を誰にもわかり易く書き著したものである。
内容の一節
暁の明星が足下に見えた。もう一人のゴーダマは小さな粒のように、はるか下方に座していた。ゴーダマは、 宇宙大にひろがり、宇宙が自分の意識の中に入って行くのだった。 全ヨジャーナー(三千大世界)が美しい星とともに、ゴーダマの眼前に、くりひろげられているのであった。 何もかも美しい。生命の躍動が、手にとるように感じられてくる。あの森も、あの河も、町も、地球も、明星も、天体の星々も、 神の偉大なる意思の下に、息づいている。まるで光明に満ちた大パノラマを見ているようであった。 見ているようでいながら、ゴーダマの肌に、生きとし生けるものの呼吸が、ジカに感じられてくる。 大パノラマは、そのままゴーダマの意識のなかで、動いているのであった。 遂に、悟りをひらいた。三十六年間につくり出した不調和な暗い心、想念の曇りが、 この瞬間において、光明と化したのであった。(第一巻 本文156~157頁)